著:平本淳也
2025年1月31日発売
まだ、終わっていない——。
ジャニーズ・ジュニアとして活動していた14歳のとき、ジャニー喜多川による性加害の犠牲になった。22歳での被害告白、その後の長きにわたる孤独な闘い。BBCと国連への協力が、ついにジャニーズ事務所による謝罪を実現する。日本社会を揺るがした性暴力事件の当事者による、半生の記録とメッセージ。
〈鈴木エイト氏推薦!〉
この人がいなかったら、何も変わらなかっただろう。
魂を蝕むプレデターとジャニーズ帝国への追及は、未来を奪われた少年たちのためだった。孤独な闘いは大きな渦となり社会を変えていく。
未来を信じつづけた35年間の軌跡が、本書に詰まっている。(ジャーナリスト、作家)
もくじ
1 憧れ
2 魔手
3 告発
4 恐怖
5 黒船
6 援軍
7 勝利
8 救済
9 責任
10 願い
前書きより
2023年9月7日。この日は僕にとって「運命の日」となった。ジャニーズ事務所の記者会見が行なわれ、藤島ジュリー景子代表と東山紀之社長、井ノ原快彦ジャニーズアイランド社長と弁護士の木目田裕氏が登壇(肩書は当時)。この場で表明されたのは、創業者で元社長のジャニー喜多川が少年たちに繰り返し行なった性加害について、事実を認めて謝罪するということだった。
憧れのジャニーズ事務所でジュニアとして活動していた14歳のとき、僕もジャニーによる性加害の犠牲になった。夢の世界にいつづけるため、それは我慢しなければならないことだった。誰にも言えない苦しみが僕の心身を蝕み、今も苛みつづけている。
18歳でジャニーズを退所し、4年ほど後の1989年、僕は自分が被害者であることを公表した。元フォーリーブスの北公次のもとに被害者が集まり、ジャニーを告発するさまざまな活動をしたのだ。しかしジャニーの所業が事件として扱われることはなく、ジャニーズ事務所が事実を認めることもないまま、まもなく活動は収束していった。
その後の長い間、この問題を訴えつづけているのは、ジャニーズに関するあれこれを著書や記事や取材で発信する僕だけになってしまった。芸能界、いや日本社会全体に巨大な影響力をもつジャニーズ帝国を敵にまわすことで、とてつもない恐怖と孤独に襲われたことは数知れない。
その35年間の闘いが、こんな形で報われる日が来るとは、夢にも思わなかった。2023年3月に配信されたBBCのドキュメンタリー番組「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」をきっかけに、ジャニーの性加害はもはや隠せない事実として世論の追及を浴びた。国連機関の調査も入り、ついにはジャニーズ事務所が事実を認めて謝罪する結果となったのである。
このかん僕のところにも、メディアからの取材依頼や、被害者からの相談が殺到し、慌ただしい日々を過ごした。7月には「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の代表となり、ジャニーズ事務所(現・スマイルアップ)への要請や交渉を重ねた。それと並行して、日々押し寄せる被害者からの相談に対応し、補償申請を手伝うなどのサポートをした。それもこれも、ジャニーズ事務所がこの問題に向き合って責任をとり、一人でも多くの被害者が救済されるようにとの、切なる思いから行なってきたことだ。
長い闘いを経て今、僕の訴えは認められた。仲間たちも集まり、全国から、いや世界からも応援をいただけるようになった。事実無根の誹謗中傷もいまだに絶えないが、何百人もの被害者に救済の道を開けたと思えば、僕自身も救われる思いだ。
とはいえ、この問題はまだ終わっていない。ジャニーズ事務所は十分に責任を果たしたとは言えないし、救済対象外となった方たちからの相談もいまだに絶えない。メディアの追及はゆるくなり、そろそろ終わりにしたいという空気さえ感じられるが、積み残された問題は数多くある。
この本は、ジャニーズに足を踏み入れた幼いときから今に至るまでの、僕の闘いの記録だ。こうした性加害が絶対に許されない社会を子どもたちに残すため、たくさんの方々に記憶しつづけていただきたい。
平本 淳也 (ひらもと・じゅんや)
1966年6月14日生まれ。ジャニーズ性加害問題当事者の会・元代表。ジャニーズ事務所に所属したタレントで作家。所属時には多くのステージを踏み、ドラマや映画、バラエティなどで活躍。旧所属者たちと新生フォーリーブス、新・光GENJI、シャドーを結成して性加害問題を提起した最初期の実名告発者となる。ジャニーズ関連を含む書籍制作、著書は30冊以上。著作のほか記事や情報提供は無数にあり、メディア出演も多数こなすジャニーズ性加害問題の第一人者。
ジャニーズ帝国との闘い
2025年1月31日発売予定
四六判並製、272ページ、2000円(税別)
書籍 ISBN 978-4-911256-09-1