著者:アーティフ・アブー・サイフ
訳:中野真紀子
2024年5月発売
10月7日にイスラエルがガザへの爆撃を始めたあの日から、著者は他の市民とともに命がけの避難を繰り返すことになる。戦場と喪失の圧倒的記録。
ハマスへの報復とし、イスラエルがパレスチナ自治区ガザへの爆撃を始めた2023年10月7日から、著者の日記は始まる。
その日、パレスチナ人の著者は、仕事でガザを訪れていた。仕事が終わったら、そこに住む親族たちとおしゃべりでもしようと、15歳の息子も一緒だった。
爆撃の音が鳴り響いたのは、いつもと同じように忙しい日が始まる予定だった早朝、束の間の休息を海辺で過ごしていた時だった。とっさに、「どうせいつものちょっとした攻撃だろう、どうせすぐに止むだろう」と思ったと書く著者の言葉は、パレスチナの人々が日常的に歴史的に、いかに戦場に近い環境で暮らしてきたのかを物語る。
ただ、その日の爆撃は「明らかに何かが違い」、止むどころか、著者とその家族、ガザの人々に、長く困難な避難の旅を強いることになる。
ライフラインが絶たれ、ネットも繋がらないことが増えるなか、何が起きているのか、何をするべきなのか、どこに行くべきか、誤れない選択を次々と迫られる。
ガザの子どもたちが、爆撃を受けてバラバラになっても自分だと分かってもらえるようにと、自分の手足にマジックで名前を書き始めたこと、アーティストになる夢を実現するはずだった親族が重症を負ったこと、絶望が連鎖するなか、心をどうにか探り、励ましの言葉を与え合ったこと、昨日いたジャーナリストが今日はカメラも命も失ったこと、瓦礫の平地になる故郷を見たこと、転々とする避難先での暮らしーー。
「空爆のたびに、記憶は瓦礫や破片とともに飛び散り、歴史は消されていく。救急車のサイレンが鳴り響くたびに、誰かの希望が消えていく」
ここには絶望の限りがある、世界は助けてはくれない、と書く著者は一方で、書くことは復興の道筋にもなるはずだと書く。
パレスチナの地で、いま、人々に何が起きているのか。
爆撃下の大地で、作家である著者が文字を綴り、時にボイスメッセージでイギリスの出版社に送り続けた日記の、ほぼ編集なしのありのままを、世界11言語で緊急出版。
※出版は、イギリスの出版社Comma Pressが主催する多言語出版キャンペーンの一環*で、日本を含む全世界での売り上げ金(諸経費を除く)はすべて、パレスチナ支援3団体**に寄付されます。
*英語(英・米)、スペイン語、カタルーニャ語、ポルトガル語、フランス語、イタリア語、アイスランド語、インドネシア語、韓国語、日本語でそれぞれの国と地域の出版社が順次出版予定。
* *Medical Aid for Palestinians, the Middle East Children’s Alliance, and Sheffield Palestine Solidarity Campaign (Khan Younis Emergency Relief).
もくじ
クリス・ヘッジズ(元「ニューヨークタイムズ」記者、2002年ピューリツァー賞受賞)による序文
日記 Day1〜Day85
著者によるあとがき
ガザ日記:ジェノサイドの記録
2024年5月刊行予定
四六判上製、416ページ、2800円(税別)
書籍 ISBN 978-4-911256-06-0 C0036
電子書籍 ISBN 978-4-911256-56-5 C0036
著者について
アーティフ・アブー・ サイフ(ATEF ABU SAIF)
小説家、作家。1973年パレスチナ・ガザ地区のジャバリア難民キャンプ生まれ。ビルゼイト大学で学士号、ブラッドフォード大学で修士号取得。欧州大学院で政治・社会科学の博士号取得。ヨルダン川西岸地区在住。これまでに6冊の小説を出版するほか、パレスチナ関連の執筆などを行なう。2019年からパレスチナ自治政府文化大臣。
翻訳
中野真紀子(なかの・まきこ)
「デモクラシー・ナウ! ジャパン」代表、翻訳業。訳書にエドワード・サイード『ペンと剣』(ちくま学芸文庫)、ノーム・チョムスキー『マニュファクチャリング・コンセント』(トランスビュー)、ナオミ・クライン『地球が燃えている : 気候崩壊から人類を救うグリーン・ニューディールの提言』(大月書店)など多数。